アフリカへ チュニジアに行く #2
ナブールまではチュニスから車で一時間半の行程。向かう途中、車の両サイドに広がる風景は延々と続くオリーブの灌木。そこに点在する白い壁の家。牧畜犬に追われた大量の羊たち。どれもいままで見たこともない風景だが、どことなく懐かしい。人が人間らしく生活を営んでいる風景だからかもしれない。次第に地中海を脇目に見ながら、車は市街へと入っていく。道の両脇には商店が現れ始め、店先には素焼きの壺が渦高く積み上げられている。ナブールは焼き物で有名な町なのだ。
車はホテルへと到着。
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IMENEという名前の三つ星ホテル。ホテルの周辺にはフェスティバルのポスターが張り巡らされている。車を降りるとホテルの前がなにやら騒がしい。握手を求めてくる一人の男性。身なりの良い男性の名前はハマディさんだとカンボスさんが紹介してくれる。フェスティバルの芸術監督で、我々をチュニジアまで招待してくれた人。眼鏡がとても似合ってる。そこに突然、マーチングバンドの演奏が始まった!
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大音響なので、隣で話す声もきこえない。ハマスさんが耳元で「これは君たちの為に演奏をしているんだ」と教えてくれる。なんだか、とてもすごい幕開けだ!

結局、やはりその日の公演は取りやめになった。お歴々の観に来る重要な公演だったようで残念な気もするが、セッティングする時間すらないのでしょうがない。しかし、僕らの代わりにブラジルが公演をしてくれることになったそうで、是非見て欲しいとハマディさんに言われる。荷物だけをおろし、我々は劇場へと向かった。劇場までは徒歩で15分くらい。高層建築のない街並みをのんびりと歩く。
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劇場であるセントラルホールの外観。劇場に到着したときには開演時間の15時を過ぎていたのだが、まだ入場も始まっていないようでフロアーには大勢の子どもたち聴衆が溢れかえっている。みんな、日本人が余程珍しいらしく、口々に叫びながら笑いかけてくる。子どもたちは特に「ジャッキーチョン!(おそらく、ジャッキーチェンだろう)」と言いながら、「あちょー!」などと言ってくる。「それは香港だよ」と心の中でつっこみつつ、笑いあう。みんな屈託がない。「ヤポン?」とみんな、この突然の訪問者に臆することなく、心から興味を抱いているようだ。どうやら、この地に日本の劇団が来るのは初めてらしく、現地のラジオやテレビなどを通じて、我々の来ることが伝わっていたらしい。それで、直前の公演変更もアナウンスされたようだ。
人混みをかき分け、みんなと挨拶を交わしながら劇場に入り、シートに身を沈める。みんな劇場に入っても興奮は収まらず、ボルテージは上がる一方だ。叫んでいるもの、口笛を鳴らすもの。走り回るもの。様々でどれもまったく落ち着きがないのだが、なぜか居心地がとてもいい。その時、ハマディさんが「ちょっと来てくれ!」と呼びに来る。腕をひっぱって玄関口に連れ戻される。我々に一列で並ぶように告げると「市長が来るので、ここで出迎えて挨拶をしてほしい」という。聞いてないよ!まったくサプライズの連続である!
「ほんとうに、びっくりよね!」と隣にいた女性に話しかけられる。彼女はポーランドから来た女優で、スパイダーマンの彼女のような表情がとてもチャーミングだ。市長を待っている間、僕らはいろいろと話をする。「あなた、芸術監督なの?」と僕がそうだと応えると、「私もなの」と彼女は言う。「またいろいろ、話しましょう!」などと約束をしていると、辺りが一層、騒がしくなり始めた。
テレビカメラとクルーがライトを点灯させて玄関口になだれ込んでくる。その一団の中にはおそらく市長がいて、まわりをお歴々が取り囲んでいる。まるでテレビでいつか見たような風景。僕は市長と握手を交わす。ハマディさんが「日本から来た劇団です(アラビア語なのでわからないが、おそらくそうだろう)」と我々を紹介する。市長の表情が「ほう?」といった感じに変わる。「そうなんです、僕たちは日本から来ました。遠く海を越えて、お芝居を運んできたんです。」と僕は心の中でつぶやきながら、市長に微笑みかける。
そしてこんどはハマディさん、市長と共に最前列に座ってくれと言う。
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劇場はすでに満員。そこに何故か最前列だけが、ぽっかりと口を開けるように我々を待っている。シートに座ると途端にテレビカメラ、追いかけてくるライト、ライト!何だかよくわからないが大変なことになっている。急に、場内の灯りが落ちる。蛍光灯の客電が一斉にダウンして、真っ暗闇になる。観客は一斉に歓声を上げる。舞台に灯りが入り、公演が始まる!考えてみれば、僕らがこの状況で代わりに公演をしていたはずで、身震いがしてくる。「この人たちはなんでこんなに興奮しているんだろう?」「こういう国民性なのかな?」「他に娯楽はないんだろうか?」「それにしても突然、演目が変わったはずなのになんでこんなに超満員なんだ?」様々な疑問が、めまぐるしく頭の中に浮かんでくる。
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向かって左側がハマディ。舞台上ではハマディ氏が挨拶をして、観客をより一層盛り上げる。盛り上げ上手!しかしこれ以上盛り上げる必要ないんじゃないか?一体、何をはじめようと言うんだ?このままでは長いので#3に続く。
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by nakadachi2 | 2008-01-01 04:01 | TACT/FEST