東京日帰りと祖母の記憶。思いはつながっていく
東京に日帰りで行って来た。朝一番の飛行機にのって、最終の飛行機で帰ってきた。滞在時間中に会議だけに出席しただけでなにも他にする時間はなかった。亡くなった祖母が、90代になっても日帰りで東京に行っていたのを思いだした。茶道教諭であった祖母は、東京の教室に月に二度程行かなければならなかった。それで、大阪の家に帰ってくるといつも、ああーほっとした!っていう声を出していた。その頃は、なぜ東京まで行ってこの人は日帰りをするんだろうと不思議に思っていた。どうして泊まらないのか、その方がラクなんじゃないかって。でも、いま、自分がその祖母と同じ事をやっている。それが少し不思議に思えた。

祖母が亡くなったのは、2008年の夏、フェスティバルの初日の暑い日だった。ずっと寝たまま、最期には意識もなくなり、水を与える事すらできず、ただ死を待つばかりだった。次第にミイラのように枯れていくその姿をみて、人間はこれほどまでにいき抜く事ができるのかと感動したのをいまも覚えている。その祖母が亡くなったのがフェスティバルの初日だったというのも、何か運命を感じたものだ。海外から多くの人を笑顔で迎えながら、出会い別れ、その連続である人の生き死にという事をずっと考えていた。

今年もまた暑い夏のフェスティバルが二週間後に幕を開ける。今年はアシテジという国際児童演劇協会の日本センターが生まれてから30周年を迎えた節目の年にあたる。そして、大阪でアジア数ヶ国が一堂に介した会議が行われる。僕の父もこの活動に尽力してきた一人だ。数年前に怪我をしてから、ほぼ家を出なくなった父。すべての活動を僕に託して引退した父の事を思い、10年間開催されなかったこの会議を大阪で開きたいと思った。日本のため、アジアの未来のため、そして父の尽力してきた仕事のために。

今回のフェスティバルのラインナップも、世界中を回って集めてきたものだ。ほぼ世界でも類をみないクオリティの作品が集まっている奇跡のようなフェスティバルだと自負している。大阪の宝と言っていい9日間になるだろう。昨日、文化庁の文化担当者の話を伺ったさい、フェスティバルに対する助成が厳しくなっているという話を聞いた。これからは経済的な理由で開催することができないフェスティバルも多数あるだろうという。元気のない日本で、また文化芸術の祭りが無くなろうとしている。国の支援だけに頼らない自立が必要だ。それにはみなさんの応援が不可欠です。フェスティバルに一人でも多くの人を連れて来てください。絶対に素晴らしい体験となります。一人でも多くの人、あなたの隣人に声をかけてください。

人々の思いはつながっていく。誰かが倒れてもその思いは時を超えて行くことができる。そして国境までも超えて行くことができるんだ。東京日帰りなんてたいした事じゃない時代。世界は近くなった。人々の心を近づけていくのが私たちにできることなんだから。
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by nakadachi2 | 2010-07-16 06:16 | TACT/FEST